無料ブログはココログ

« オペ前日 | トップページ | そして当日 2 »

2017/06/01

そして当日

その朝、5時前にはもう目が覚めてしまった。

病院に7時に着くためには6時半に家を出ればいいのだが、
荷造りは夕べのうちに済んでるし、
前日の夜以降は何も食べてはいけないので、
朝食も取れないし、シャワーを浴びた後は、
なーんにもする事が無い。
落ち着かない気分で、ひたすら家の中をうろうろ。

病院に着いたらすぐに病室に案内された。
看護師のお姉さん曰く、
「あなたのオペは10時からだから、それまでゆっくりしてて」

え~、今から10時まで時間があるの~?
ワタシは、7時に着くなりオペだと思ってたんで、
ちょっと拍子抜けしたわね。

それに、ワタシ、手術を受けるときって、
担当の執刀医がベットまで来て、ワタシの手を握って
「ワタシ、失敗しないから」とかなんとか言って
安心させてくれるシーンを想像してたわ。
しかし、そんな気配は全く無く、部屋にはひとりぼっち。
またまたなーんにもする事が無いんで、病室の中をうろうろ。

病室は、明るくて窓から緑が見える。
4人部屋のようだが、他の人は誰もいなくて、
しーんとした広い部屋に、一人ぼっちでありました。
こう言う時間って、すごく辛いものです。

あと2時間以上、何をして過ごせばいいの~?
と、思っていたら、突然、ものすごい足音と共に、
一人のオバちゃんが部屋に駆け込んできた。

年齢は60代半ばくらい。
ぼっさぼさの髪に普段着に、ド派手なハイソックス。
さらに、オバちゃんが持って来たのは、
スーツケースでもボストンバックでもなく、
ショッピングカー。
スーパーマーケットとかに買い物に引っ張っていく、
車輪がついたショッピングバックであります。
それもかなり使い古して年季が入っている。

「あら、あなたも今日、オペなの?私もよ~。
ちょっと遅くなっちゃったわ~。私、時間通りに
行動するのが苦手でねえ。
私、B子というの。あなたは?あ、日本人なの?
お知り合いになれてうれしいわ~」
と、まくし立てながら、持ってきた荷物をあけて
中のものを出し始めた。

「時間が無くて、あわててそこらじゅうのものを詰めてきたの。」
確かに、ついさっきまで着てたものを放り込んだ、と言う感じだな。

ひたすらしゃべりながら、最後にぬいぐるみをベットに置いた。
「これ、知ってる?ナマケモノよ。かわいいでしょ。
ナマケモノって、本当は怠け者じゃないのよ」

はっきり言って、ものすごくナーバスな状態のワタシには、
今は、ナマケモノの生態など、どーでもよかった。
ワタシはついさっきまでの静寂が懐かしくなった。

ワタシは、オバちゃんの話をちゃんと聞いてはなかったが、
膀胱に簡単な処置をするだけなので、時間も20分くらい、
オペというほどではないのだとか。

「あら、あなた、すごくナーバスな顔してるわね。
そんなに心配することは無いわよ。オペなんて
眠ってる間にすぐに済むから」

そんなの、分かってるんだが、それでもやっぱり怖いわよ。

「わかるわあ。ワタシもね、やっぱり麻酔は怖いのよ。
ワタシの母はねえ、手術を受けて麻酔から覚めずに
亡くなったのよ」

オバちゃん、そんな話、今するなって。

その後も、オバちゃんはひたすらしゃべり続け、
ショッピングカーの中からお菓子を出して、
「これ、オペの後で一緒に食べましょうね~」
オバちゃん、お気持ちはとっても嬉しいですが、
ワタシ、今は、とてもオペの後のことなんて考えられんですよ。

その他、ペットの話とかもしていたような気がするが、
ワタシはほとんど聞いていなかった。
お願いだから、少し静かにしててくれ~。

・・・と、叫びそうになった時、看護師さんがやってきて
「まあ、○○さん、まだ準備してないの?急がないと」
と、オバちゃんを強引に着替えさせて、ベットに寝かしつけ、
ベットごとオバちゃんを部屋から運び出してくれた。

はあ、これでやっと静かに過ごせる。
と、思ったのも束の間。
オバちゃんは、30分も立たないうちにまた
ベットごと部屋に戻ってきたのであった。
事情は知らないが、何らかの不都合があって、
オペは二日後に延期になったとか。

「だから、今日は少し休んで午後に家に帰るの。」

その後もオバちゃんの爆弾トークは続いたが、
処方された薬のせいか、間もなくオバちゃんは
眠ってくれた。

そうこうしているうちに、ワタシもオペ準備の時間になった。
オバちゃんのおかげで、時間つぶしと気晴らしにはなったが、
ワタシはオペ前にすでに、かなり疲労していたのである。




« オペ前日 | トップページ | そして当日 2 »